寄与分とは?
Q.質問① 長男は、亡くなった父とともに農業を営み家計を助けていましたが、この場合、長男の取り分は次男と全く同じなのでしょうか? |
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A.行政書士・社会保険労務士岩本の回答 ご長男の活動が、亡くなったお父様の財産の維持、増加に貢献しているとして認められることを寄与分といい、次男よりも多く相続財産を相続することができる可能性があります。 |
Q.質問② 私は夫に先立たれてしまったのですが、夫の両親と同居し、寝たきりになった義父の面倒を見ています。どれだけ世話をしてもあなたは相続できないと知人に言われたのですが・・・。 |
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A.行政書士・社会保険労務士岩本の回答 確かに、貴殿は義父の相続人ではないので相続することができませんが、全くその可能性がないわけではありません。 |
寄与分とは相続人のみに認められた制度で、亡くなった方に対し、
- 労務の提供
- 財産上の給付
- 療養看護
など、亡くなった方に利益をもたらした相続人に対し、その労をねぎらい、相続財産を分与するという主旨のものです。
寄与分として認められる金額は、原則として相続人全員の協議で算定されますが、決まらなければ亡くなった方の財産の増加に貢献した者の請求により、家庭裁判所が寄与分を定めます。
上記①の例で、相続人が母、長男、次男で、長男が相続財産に寄与した分が1,000万円、相続開始時の相続財産が5,000万円と仮定すると、寄与分1,000万円を引いた4,000万円が相続財産であったとみなされます。
4,000万円から法定相続分により分割すると、母が2,000万円、次男が1,000万円を取得し長男は1,000万円に寄与分として認められた1,000万円分を足して合計2,000万円が取得できるということになります。
寄与分といってもなかなか簡単に判断がつきにくく、その金額についても折り合いがつかない場合が多くあります。
まずは寄与分に該当すると思う部分に関しては証拠を書面で残しておくことをお勧めします。
寄与分が認められるのは相続人のみ!?
寄与分のポイントは、相続人に対してのみ認められているという点です。
いくら財産の増加に貢献したからといっても、相続人でなければ寄与分は認められません。
例えば、上記②の例のように、夫が義父より先に亡くなっている場合、長男の妻は義父が亡くなったときには相続人となりませんので、残念ながら寄与分も認められません。
いくら同居してお世話していても・・・。
現在の所、寄与分をめぐる判例では、20~30年の間、相続財産に対する貢献があったと認められない限り、寄与分があるとは判断されていません。
寄与分という制度があるといっても、相当長い期間、共に協力してきた相続人にしか認められておらず、まだまだ限られた範囲での制度であるのが現状です。
(上記の例で長男の妻は相続人ではないので、寄与分が認められることは難しいでしょう)
仮に、義父が相続財産を長男の妻に与えたいと思うのなら、養子縁組をして長男の妻に相続させるか、遺言書で長男の妻に財産を遺贈しましょう。
ただ、他の相続人がいる場合は相続人が増え、トラブルに発展する可能性がありますので、ご注意ください。
ですので、寄与分が認められる可能性がある場合でも、養子縁組をするか、遺言書を作成しておいた方がいいでしょう。
寄与分は誰が決める?
寄与分は、まず相続人の間で話し合い、決定します。
しかし、それでうまく調整がつかない場合、家庭裁判所に調停または審判の請求をして、寄与分を決定してもらうことになります。
この話し合いは、なかなかうまく合意できないのが現状のようです。
お互いの立場の違いもあり、寄与分を主張することすら難しい場合もあるかもしれません。
また話し合いで決着がつかず、家庭裁判所の調停などで寄与分が認められたとしても、実際のお世話の苦労から考えて十分なものとはいえないかも知れません。
今まで父親の面倒を一切みてこなかった子供が、父親が亡くなったとたん自分が相続人だと主張して面倒をみてきた相続人ではない方をまったく相手にせず、財産を分割するということにもなりかねません。
寄与分を話し合う余地もなさそうだという場合は、生前にできることをしておく方がよさそうです。
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