相続欠格・推定相続人の廃除とは?

Q.質問
親不孝者の子供には何も相続させたくないのですが、何か方法はありませんか?

行政書士・社会保険労務士 岩本浩昭

A.行政書士・社会保険労務士岩本の回答

親不孝者という理由だけでは相続する権利を奪うことはできませんが、不利益を与えた推定相続人を相続人から排除することはできます。

相続欠格とは?

サスペンスドラマでは、相続人となるべき人が財産目当てで資産家の身内を殺害するという設定がよくあります。

こういう場合、殺人を犯した人は相続人として財産を受け取ることができないと定められています。

これを相続欠格といい、以下のような行為を行った人は、相続する権利がなくなります。

  1. 故意に推定相続人を死亡させるに至らせ、または至らせようとしたために刑に処せられた者。
    ⇒ドラマでよくある遺産目当ての殺人・保険金詐欺など。
  2. 殺害されたことを知っていてこれを告発せず、または告訴しなかった者。
    ⇒殺害者が配偶者、子供・親等であった場合は、告訴・告発しなくても相続欠格にはなりません。
  3. 詐欺または強迫によって、遺言に不利益を与えた者。
    ⇒遺言の取消・変更を妨げ、本人の意思に反して遺言をさせまたは取消・変更させた者。
  4. 遺言書を偽造・変造・破棄または隠匿した者
    ⇒隠匿に関して、遺言書の存在を言っていなかったという程度の過失であれば、相続欠格に該当しません。

相続欠格となった相続人に子供がいれば、相続欠格となった相続人の代わりにその子供が相続することができます。

これを代襲相続といいます。

⇒ 代襲相続について詳しくはこちら

推定相続人の廃除とは?

何かしら理由があって、相続人に自分の財産を相続させたくないという場合もあると思います。

ただ、相続人である以上、いかなる理由があっても相続する権利があります。

では、相続させたくない相続人がいても財産を相続させるしかないのでしょうか?

そんな場合、推定相続人の廃除を行い、財産を相続させないという方法もあります。

推定相続人の廃除とは、相続人となるべき者の相続権を奪うことになりますので、きちんと家庭裁判所にて手続きを行わなければなりません。

但し、推定相続人の廃除はそう簡単にできるわけではありません。

  1. 虐待
  2. 重大な侮辱
  3. 著しい非行

があったときに、家庭裁判所に対して請求できることになっています。

判例では、妊娠中の妻が夫に腹部を蹴られて流産したケースで、夫に対し、相続人の廃除が認められています。

また長期間にわたり賭博行為を繰り返し、これによって作った借金を全て支払わせ、かつ愛人と同居していたとして、相続人の廃除を認めたケースもあります。

このように、相当ひどい行為でないと認められていないというのが現状です。

親の反対を押し切って結婚して勘当されていたというケースや、入院していたのに見舞いに行かなかったというケースであれば、残念ですが廃除の請求は認められない可能性が高いです。

なお、一度相続人の廃除をした後、当事者が更生し、やっぱり相続させてやりたいと思った場合、廃除の取消を請求することができます。

ですので、一度廃除された推定相続人が二度と相続できないというわけではありません。

相続欠格と同様、推定相続人の廃除となった相続人に子供がいれば、その子供が相続人の廃除となった相続人の代わりに代襲相続することができます。

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